低髄液圧症候群の症状と交通事故の後遺障害の認定について

公開日:2018-06-29 |最終更新日:2024-01-31

弁護士やまケン

弁護士 山﨑 賢一(東京弁護士会所属)

1989年4月に弁護士登録。通称「やまケン」。全国各地からご依頼をいただき、年間ほぼ100件以上の交通事故事案を完全成功報酬型弁護士費用特約のご利用で解決に導いています。当コラムでは、交通事故の被害に遭われた方に役立つ基礎知識を共有できればと思っています。

低髄液圧症候群の症状と交通事故の後遺障害の認定について

脳脊髄液減少症とは、髄膜(脳と脊髄を守る外殻で、軟膜、クモ膜、硬膜の総称です。髄膜内部は無色透明の脳脊髄液で満たされており、脳と脊髄は脳脊髄液の中に浮かんでいます)から脳脊髄液が漏出することで脳が下垂して脳を正常な位置に保つことができなくなり、その結果、脳と頭蓋骨をつなぐ神経や血管がひっぱられてしまい、激しい頭痛(牽引性頭痛)などの症状が出るものです。

当初は「低髄液圧症候群」と呼ばれ、大々的にニュースでとりあげられたことから、「低髄液圧症候群」という呼び名のほうが有名ですが、現在では一般的に「脳脊髄液減少症」と呼ばれています。

この脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)は、交通事故で「むち打ち症」になった被害者の中で、検査では異常が認められないのに、長い間、激しい頭痛などが治まらず、日常生活に支障が出る人がかなりいることから大きな問題となりました。

しかし、今のところ正確な原因が判明しておらず、確立した治療法が存在しないことから、医師の中には脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)という傷病の存在自体を強く否定するなど、脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)に対する医学界の見解もまとまっておらず、非常に難しい問題があります。

低髄液圧症候群はどんな症状が出るのか

脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の症状で最も特徴的なものは、「起立性頭痛」と呼ばれるものです。「起立性頭痛」とは、立ったり座ったりすると激しい頭痛がするものの、寝ると頭痛がなくなったり大幅に緩和されたりする症状のものをいいます。

起立性頭痛とは、立位または座位をとると悪化する頭痛であると定義されています。立位または座位になると頭蓋が髄液の漏出部位より位置が高くなり、その結果として漏出する髄液の量が増え、頭痛が悪化すると考えられています。

脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)は、起立性頭痛を中核的な症状として、項部硬直、耳鳴り、聴力低下、光過敏、悪心、頚部痛、めまい、視機能障害、倦怠感や疲労感の1つないし複数が組み合わさることもあります。

低髄液圧症候群とむち打ちの違い

脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)とむち打ち症の違いは、「起立性頭痛」の有無です。

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低髄液圧症候群の検査と診断方法

交通事故などを原因とする脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)には、確立した検査方法や診断方法が存在しません。

ただし、造影脳MRI(造影剤を用いたMRI撮影)を行い、脳が下垂しているなどの脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)を疑わせる所見がみつかれば、次に脳脊髄液が漏出しているかどうかの詳しい検査を行います。

脳脊髄液の漏出個所は、大抵のケースでは腰の脊髄部分です。むち打ちを原因とする脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)では、首のむち打ちによって、首から遠く離れた腰の脊髄部分の髄膜が傷つき腰椎部分から脳脊髄液が漏出するのはおかしいと主張する医師もいますが、むち打ち状態で脳脊髄液の圧力が一時的に高まることで脊髄のクモ膜が剥離し、剥離部分から脳脊髄液が漏出し、メッシュ状の硬膜の隙間から髄膜の外に漏れ出すのではないかと考える医師もいます。

低髄液圧症候群の治療方法

脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の確立した治療方法は存在しません。しかし、発症直後にじっと横になり、水分を摂取するか輸液をすると、脳脊髄液の漏出部分が自然にふさがって治癒することがあります。そのため、脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の疑いがあるケースでは、とにかくじっと横になって安静にしているように指示されることが一般です。

じっと横になって安静にしても起立性頭痛が治まらないときは、ブラッドパッチ療法(硬膜外自家血注入療法)が検討されます。これは患者自身から採取した血液(静脈血)を脳脊髄液の漏出箇所付近の硬膜に注入する治療法です。
硬膜の外に血液を注入すると、硬膜の外の圧力が強まります。

そうすると、硬膜の外部が陽圧、硬膜の内部が陰圧となり、硬膜の内部の脳脊髄液が外部に漏出しにくくなります。また、血液にはフィブリノゲンという凝固反応があるタンパク質が含まれていることから、血液が固まって脳脊髄液の漏出部分の穴をふさぐ効果も期待することができます。

ブラッドパッチ療法が成功して漏出がとまると、髄膜の中に脳脊髄液がたまり始め、およそ1~2か月で下垂していた脳が元の位置まで浮かび上がります。脳が元の位置まで浮かび上がれば、起立性頭痛などの脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の症状はすみやかに改善されます。

ブラッドパッチ療法は、治療自体は短時間で終わりますが、治療後はしばらく安静にしていなければならないため、数日から1週間程度の入院が必要です。

ブラッドパッチ療法は1回の施術でおよそ5割の患者の症状が改善するといわれています。1回目で効果が見られなかったときは、2回目のブラッドパッチ療法を行いますが、組織接着剤(フィブリン糊)を神経根に注入したり手術で穴をふさいだりする治療法もあります。

これらの適切な治療をすると、およそ7割の患者の症状が改善するといわれています。しかし、残りの3割の患者には効果がありません。脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)が慢性化してから時間が経過すればするほど治りにくくなるといわれていますので、できる限り早期に正しい診断を受け、適切な治療をすることが重要です。

低髄液圧症候群の後遺障害等級

脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)は、その傷病名自体を否定する医師もおり、診断基準や治療方法が確立されていないなどの問題点があることから、多くの裁判所では脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)を後遺障害とは認めませんし、地方裁判所で脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)を後遺障害と認める判決が出ても、高等裁判所で破棄される場合もあります。

厚生労働省は、8つの学会と共同で、平成23年に「脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準」を公表し、平成28年4月からは上記基準に基づいて脳脊髄液漏出症が「確実」または「確定」と診断された患者に対するブラッドパッチ療法が保険適用となりました。

しかしながら、上記基準は中間報告の扱いであり、脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)が解明されたとはいえません。今後の症例の集積による研究の発展が待たれるところです。

とはいえ、交通事故でむち打ち症になったあとに起立性頭痛に悩まされているときは、脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)を疑い、早期に適切な治療を受けるべきです。日常生活が困難なほどの起立性頭痛に悩まされているときに交通事故の加害者の任意保険会社との交渉をするのは大変です。

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弁護士 山﨑 賢一 (Kenichi Yamazaki)
弁護士 山﨑 賢一 (Kenichi Yamazaki)

【東京弁護士会所属 No.21102】弁護士歴35年。交通事故取扱開始から21年のキャリアの中で手掛けた案件のうち交通事故分野は9割超。2023年末で累計2,057件の解決件数があり、年間にほぼ100件以上の交通事故事案を解決に導いています(2024年1月現在)。示談金の増額がなければ弁護士費用は一切不要の「完全出来高報酬制」で交通事故被害者を全面サポート!全国対応、交通事故のご相談は何度でも無料です。