世界の交通事故事情
やよい共同法律事務所の弁護士やまケンこと、山﨑賢一です。
ある統計によると、世界では交通事故によって毎5分ごとに12人が死亡し、480人が負傷しているとのこと。
国連総会はこの悲惨な数字を重く見て、2010年に道路交通事故死者数を半減させることを目標とし、2011年から2020年の10年間を「交通安全のための行動の10年」と位置付け、その活動を開始しました。
日本国内での交通事故の発生件数は減少傾向にありますが、世界全体で見るとまだまだ交通事故の発生件数は増加傾向にありますし、死亡事故のような重大な交通事故も数多く発生しています。
そこで、今日は世界の交通事故事情について、皆さまにお話したいと思いますのでお付き合いください。
目次
どの国で交通事故が多く発生しているのか
アメリカのワシントンポスト紙によりますと、世界で交通事故によって死亡する者の数は年間で124万人、2030年までには約3倍の360万人に達する、と報じられています。
そして、発展途上国での交通事故の死亡率は、AIDS・マラリア・結核などの次に、高いといわれています。
では、どの国で、より多く交通事故、そして死亡事故が発生しているのでしょうか?
交通事故の発生件数
以下のランキングは、総務省の調べによるものです。
- 第1位 アメリカ 154万7797件
- 第2位 日本 73万6688件
- 第3位 インド 48万6384件
- 第4位 ドイツ 31万0806件
- 第5位 中国 23万8351件
やはり、人口や自動車保有数の多い国が上位にランクインしています。
ただし、軽微な交通事故等では、当事者が警察に通報や申告をしていないようなケースが多い国もあり、その点を考慮すると、このデータも実際の交通事故発生件数を反映できているか、少し疑義が残るところです。
死亡者を伴う交通事故の発生件数
以下のランキングは、WHO世界保健機関の調べによるものです。
- 第1位 インド 13万37件
- 第2位 中国 7万134件
- 第3位 ブラジル 3万6499件
- 第4位 アメリカ 3万2885件
- 第5位 インドネシア 3万1234件
このランキングを見てみると、先に記載した、交通事故の発生件数のランキング上位5位までのうち3ヶ国がこちらにもランクインしていますが、日本はランクインしていません。
日本は、スピードをあまり出していない状態での交通事故が多いことが、他国に比べて死亡事故の割合が少ない理由の1つとされています。
人口10万人当たりの交通事故死亡率
以下のランキングも、WHO世界保健機関の調べによるものです。
- 第1位 ニウエ 68.3人
- 第2位 ドミニカ共和国 41.7人
- 第3位 タイ 38.1人
- 第4位 ベネズエラ 37.2人
- 第5位 イラン 34.1人
先に記載した2つのランキングは、いずれも交通事故あるいは死亡事故の発生「件数」であるため、人口が多い国が上位にランクインされるのは、ある意味で必然と言えるかもしれません。
そこで、今度は、人口10万人当たりの交通事故の事故死率です。
第1位のニウエという国は、ご存知ない方がほとんどかと思いますが、この国はオセアニアに浮かぶ人口わずか約1500人足らずの小さな国です。
ですから、国内でたった1件の死亡事故が発生しただけでも、このランキングにランクインしてしまう、ということになります。
それ以外の国を見てみても、アメリカや日本等の先進国とは異なり、国内インフラが整備されていないような、新興国がランクインしている傾向にあります。
次に、この中から、交通事故死亡率の高い国3位のタイをピックアップして、その特徴や原因等を探ってみたいと思います。
タイの交通事故事情
日本では、交通事故死亡率が年々減少しておりますが、その一方、タイでは交通事故死亡率が増加の一途を辿っています。
その原因はいくつかあるようです。
①道路や車両の整備状況
タイでは、まだインフラが整備されておらず、劣悪な道路上での運転が強いられるエリアも少なくありません。
また、日本と同様、車検の制度はあるものの名ばかりで、非常に規制が緩く、車両の故障等を原因とした交通事故が多く発生しているようです。
②飲酒運転
タイでは、交通事故の発生件数が圧倒的に多くなるシーズンがあります。
それは「ソンクラン」と言い、道行く人々がお互いに水鉄砲などで水を掛け合う、世界的にも有名で人気の高いお祭りが開催される4月頃です。
その時期には、タイ国内で帰省ラッシュが起こります。
また、自動車やバイクの飲酒運転により、死亡事故を伴う大変なアクシデントを起こしてしまうことが多いようです。
③外国人観光客による運転
タイのビーチリゾートでは公共交通機関がなく、外国人観光客はバイクやスクーター等をレンタルし、それを滞在中のショッピングや観光の足として利用します。
そのため、現地の道路状況に不慣れな外国人観光客の運転による交通事故も多いようです。
もし交通事故の当事者になったら
世界に目を向けてみると、貧しくてインフラが整備されていなかったり、ドライバーがルールやマナーを守らないがために交通事故を発生させたり、まだまだ死亡を伴う重大な交通事故が増え続けている国があります。
日本も、交通事故の発生件数は年々減少傾向にあるとはいえ、今もなお国内で1分間に1件以上の割合で交通事故が起きているという計算になります。
私たちの意識次第で未然に防ぐことができる交通事故もありますが、自動車が走っている限り、交通事故は0にはならないのかもしれません。
もし、交通事故の当事者となってしまったら、いち早く交通事故に強い弁護士に相談し、そのダメージを最小限にとどめることに努めましょう。